人工呼吸器へ苦手意識を持った看護師は多いのではないでしょうか?
実際、私も新人時代は人工呼吸器を装着した患者が受け持ちにいると憂鬱でした。
勉強して看護できるようになりたいけど、どうすればいいか分からない…
先輩はどう勉強したの?
看護師
結論、一度理解すれば人工呼吸器を装着中の患者の看は上で怖くなくなります。
また、今回から全6回の記事で「人工呼吸器の基礎知識と看護」を学べます。
- パート①:人工呼吸器の基礎知識
- パート②:人工呼吸器に関する用語
- パート③:人工呼吸器の種類
- パート④:人工呼吸器のアラーム
- パート⑤:人工呼吸器を装着中の患者の看護
- パート⑥:人工呼吸器装着の合併症
人工呼吸器に対する苦手意識をなくし、1歩進んだ看護ができるようになりましょう!
目次
人工呼吸器を装着する目的
人工呼吸器を装着した目的が分かれば、ウィーニング(離脱)までの看護問題・目標が明確になります。
看護問題を解決し、患者が1日でも早く元の生活に戻るための関わりをしましょう。
人工呼吸器を装着する目的は、以下の4つ。
- 肺胞換気の維持(換気)
- 酸素化の改善
- 呼吸仕事量の軽減
- 主疾患の治療の最大化
一時的に呼吸のサポートをし、患者の負担を軽減することが目的です。
人間が生きていく上で呼吸は不可欠な行動であり、常にエネルギー消費をしています。
人工呼吸器を装着する重症患者は予備能力がなく、呼吸に使うエネルギーすら惜しい状態です。
看護師
しりんじ
詳しくはこの記事の第3章「人工呼吸器が適応となる代表的な6つの疾患」で解説します。
人工呼吸器を構成する5つの部品とその役割
看護師
このように考える看護師はとても多いです。
しりんじ
そこでこの章では、人工呼吸器を構成する6つの部品について解説します。
- 呼吸器本体
- バクテリアフィルター
- 加湿器 or 人工鼻
- ウォータートラップ
- カプノメーター(ETCO2)
それぞれの部品の役割が分かれば、触るのが怖いなんてこともなくなります。
部品①:呼吸器本体
呼吸器本体は、以下の2通り。
- 侵襲的陽圧換気(IPPV)
- 非侵襲的陽圧換気(NPPV)
しりんじ
部品②:バクテリアフィルター
呼吸器感染症だと蛇管(回路チューブ)内は細菌の温床であるため、患者と人工呼吸器を細菌汚染から守る役割があります。
看護師
しりんじ
- 交換目安は「2週間に1回」
- 破棄する際はビニール袋に入れてMCボックスへ
部品③:加湿器 or 人工鼻
加湿器や人工鼻がないと粘膜損傷や排痰困難などのリスクがあります。
加湿器や人工鼻の役割は、以下の通り。
- 呼吸器系の加湿(乾燥により損傷を予防)
- 痰の粘稠度を落とし、吸引・排痰を促す
それぞれのメリットを以下の表にまとめました。
部品④:ウォータートラップ
加湿加温で発生した人工呼吸器回路内の水滴を回収し、患者側に垂れ込んで誤嚥するのを予防します。
しりんじ
部品⑤:ETCO2(カプノメーター)
患者の呼吸(換気)・循環・代謝をアセスメントするための指標としてCO2(二酸化炭素)を計測するモニターのこと。
- 基準値:35~45mmHg
ETCO2モニターの増加・減少時の原因を一覧にしました。
看護師
しりんじ
施設により血液ガスの評価は異なるため、先輩に確認しておきましょう。
人工呼吸器が適応となる代表的な6つの疾患
呼吸器疾患で重症だから人工呼吸器を装着するという訳ではありません。
看護師
適応疾患(症状)は、以下の通り。
- 疾患①:呼吸不全
- 疾患②:循環障害
- 疾患③:気道確保目的
- 疾患④:術後・集中管理
- 疾患⑤:胸部外傷
- 疾患⑥:その他、重症疾患
「なぜ人工呼吸器が装着されているのか?」一緒に考えていきましょう。
疾患①:呼吸不全
呼吸不全とは「換気」「酸素化」「呼吸仕事量」のいずれかが不良となり、正常な呼吸運動ができていない状態のこと。
代表的な適応疾患(症状)は、以下の通り。
- 喘息
- 重要肺炎
- COPD
装着する目的は、正常な呼吸運動を行い、原疾患の治療にエネルギーを注ぐこと!
疾患②:循環障害
循環(心臓)と呼吸(肺)は直接つながった臓器であり、呼吸運動の負担は心臓へも悪影響を及ぼします。
そのため、重症心疾患の治療には「呼吸仕事量の軽減」が必要になります。
代表的な適応疾患(症状)は、以下の通り。
- 急性心筋梗塞
- うっ血性心不全
しりんじ
また、心臓へ必要な酸素を届けるための正常な酸素化をする狙いもあります。
病状③:気道確保目的
何らかの理由で気道が閉塞すると正常な換気ができず、正常な呼吸運動ができなくなります。そこで、気道確保目的として人工呼吸器を装着します。
代表的な適応疾患(症状)は、以下の通り。
- 意識障害
- アナフィラキシーショック
しりんじ
換気(外呼吸)ができないと酸素化(内呼吸)もできず、低酸素脳症をはじめ、全身へ酸素を届けられません。
つまり、低酸素脳症や多臓器不全のリスクが高まります。
しりんじ
看護師
疾患④:術後・集中管理
ご高齢やその他呼吸器疾患の既往があり、術後抜管できないケースもあります。
特に気道近くのOP(食道癌)は、術後に気道浮腫のリスクが高く、あえて抜管しません。
看護師
しりんじ
看護師
術後は早期離床したいので、病状と相談しながらウィーニング(抜管)できるように医師に相談しましょう。
疾患⑤:胸部外傷
胸部外傷により肺・胸腔周辺が損傷した際、人工呼吸器のサポートで正常な呼吸運動ができるようにします。
代表的な適応疾患(症状)は、以下の通り。
- 肺挫傷
- 気胸
交通外傷などで緊急搬送された患者に多く見られます。
しりんじ
疾患⑥:その他、重症疾患
その他、重症疾患全般の集中管理をするために人工呼吸器の適応となるケースもあります。
- 脳血管性疾患
- 代謝性疾患
- 高エネルギー外傷
つまり、以下の3つのどれかが目的になります。
- 換気のサポート
- 酸素化のサポート
- 呼吸仕事量の軽減
人工呼吸器の装着は、患者が適切かつ最善な治療が受けられる環境の一つ!
まとめ: 「なぜ人工呼吸器を装着したのか?」考えよう!
人工呼吸器装着中の患者の看護をする上で、まずは「なぜ人工呼吸器を装着したのか?」、その目的を考えましょう。
目的がわかれば、必要な看護や観察ポイントが見えてきます。
看護師
しりんじ
全6回のすべての記事を読んでいただければ、人工呼吸器装着中の患者の看護が理解できるようになっています。
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第2回は「人工呼吸器に関する用語」の記事です。
看護師
こんな経験がある方は、ぜひご活用ください!