人工呼吸器装着中の患者の看護はやることが多く、何から手をつけたら良いか分からないという方も多いのではないでしょうか?
特に新人や異動したばかりの看護師は覚えることが多く、患者の観察や不慣れな人工呼吸器の管理などストレスに感じることばかり…
しりんじ
皆さんもこのような不安を抱えているのではないでしょうか?
ポイントを押さえたアセスメントをしたい
人工呼吸器装着中の患者に必要な看護ができるようになりたい
看護師
人工呼吸器装着中の患者の看護は、ポイントを押さえて行うことが重要!
ただ漠然と観察していても、患者の状態を考慮した適切な看護はできません。
この記事では「観察シート」を載せています。
画像をダウンロードして、ポケットノートに貼り付けるなど、自由に活用してください。
この記事では、人工呼吸器の導入からウィーニング時期までの全ての看護を解説します。
また、人工呼吸器装着中の患者の看護が分からないと悩んでいる同期や後輩がいたら、この記事を進めて上げてください。
脱初心者を目指して一緒に頑張りましょう!
目次
知らないとヤバイ!必ず覚えておくべき人工呼吸器装着中の患者の観察項目
人工呼吸器装着中の患者の観察項目は、主に以下の3つに分けて考えると良いでしょう。
- 呼吸状態
- 全身状態
- 人工呼吸器の本体
先輩に「こんなことも知らないの?」と言われる前に、ぜひ覚えておきましょう。
呼吸状態
人工呼吸器装着中の患者の呼吸状態は刻一刻と変化します。
観察する際のポイントは、通常の状態(ベース)からどのように変化したかを考えること!
呼吸状態の観察項目は、以下の画像をご覧ください。
呼吸音など基本的なことから、酸塩基平衡などの検査データまで様々。
看護師
しりんじ
例えば、乳酸アシドーシスを観察する理由を考えるとします。
「なぜ観察するのか?」これを考えることが患者理解の第一歩!
全身状態
人工呼吸器装着中の患者は、呼吸状態以外にも様々な問題を抱えているケースがあります。
例えば、敗血症やDIC(播種性血管内凝固症候群)、高エネルギー外傷や糖尿病ケトアシドーシスによる昏睡状態など。
人工呼吸器を装着した患者の観察をすると、つい呼吸だけに注目してしまいがち。
しかし、主疾患や合併症などの観察を忘れてはいけません。
例えば、重症心不全の患者で考えてみましょう。
患者が抱えるメインの看護問題が何かを見失わないようにしましょう。
人工呼吸器
扱いに慣れていない新人や異動したばかりの看護師にとって、見慣れない大きな機械を扱うのはストレス…。
実際、患者の観察ができても呼吸器本体のトラブルに対処できない看護師もいます。
人工呼吸器本体の観察を怠ると安全に作動しているとは言えません。各勤務始じめに看護師2名で正常に作動中か要ダブルチェック!
チェックリストは、以下の画像をご覧ください。
患者の安全を守るために大切な観察なので、忘れずにしましょう。
【導入時】人工呼吸器装着する患者の看護
急に介助しなくちゃいけなくなったら、絶対にできないよ…
看護師
このようなお悩みを解決していきます。
人工呼吸器を導入する際の看護は、救命センターやICUなどのクリティカル看護師に勤務していると必ず経験します。
急な介助であっても焦らないように「観察項目」「準備物品」を確認しておきましょう。
観察項目
人工呼吸器を導入することになったら、患者の観察をしながら物品の準備・環境調整などをしなければいけません。
看護師
しりんじ
導入時の観察項目は、以下の画像をご覧ください。
人工呼吸器は緊急性の高い状況で導入されるケースがほとんど…。
準備物品や介助の方法を思い出す暇はありません。そこで、物品準備や挿管介助など事前に練習しておくことが重要です。
導入が遅れると患者の命が危険に晒されるリスクもあるため、ぜひこの機会に習得しておきましょう。
準備物品
人工呼吸器を導入する際の準備物品が知りたい方は、以下の記事が参考になります。
部屋作りや環境調整についても併せて解説しているので、落ちがなく準備できます。

【看護ケア編】人工呼吸器装着中の患者の看護
人工呼吸器を装着した患者の看護って緊張や不安でいっぱいになりますよね?
その原因は、9割が以下の2つ。
- 観察項目や看護が分からない
- 観察項目や看護に慣れていない
観察した内容から必要な看護が考えられるようになれば、あとは看護自体に慣れるだけ。
そこでこの章では、以下の3つの看護ケアを中心に、臨床で使えるスキルを紹介します。
- 呼吸ケア
- 身体ケア
- 安全ケア
しりんじ
観察した内容を最大限活かした看護ができるためにも、ぜひご活用ください。
呼吸ケア
具体的な呼吸ケアは、以下の通り。
- 人工呼吸器の設定確認
- 吸入・吸引
- 体位ドレナージ
- 薬剤管理
人工呼吸器の設定確認
安全な呼吸管理をするために、まずは設定や装着後の呼吸状態の変化を評価しましょう。
特に挿管された患者は鎮静や発語が難しく、意思表示ができません。
バイタルや検査データを初め、呼吸器との同期状況や患者の苦痛などを小まめに観察することが重要!
吸入・吸引
鎮静中は自力排痰が難しいため、吸入・吸引で気道クリアランスを保ちましょう。
挿管チューブが固くなった痰や分泌物で閉塞しないよう加湿器 or 人工鼻で乾燥を防ぐことも大切な看護です。
苦痛を訴えられない患者の視点に立ち、必要な看護を考えるようにしましょう。
体位ドレナージ
体位ドレナージの効果は、以下の3つ。
- 排痰を促す
- 病側肺の拡大がしやすく呼吸努力の軽減ができる
- 無気肺の予防
体位調整を行い重力を利用し、細気管支の痰や分泌物を気管支に集めて排痰を促せます。
しりんじ
下葉の細気管支の排痰を促すなら「45度以上」の側臥位にしなければ効果ナシ!
45度の根拠は、以下の画像をご覧ください。
※右側臥位で左下葉の排痰を促したい場合
また、腹臥位なら無気肺を予防できます。仰臥位で経過することの多い呼吸器装着中の患者は、背惻の無気肺になりやすいです。
肺が拡大するスペースを確保し呼吸努力の軽減効果もあるため、最低でも6時間に1回程度は行いましょう。
薬剤管理
鎮静・鎮痛薬の管理も看護師に求められる大切な呼吸ケアの一つです。
例えば、過鎮静は自発呼吸や咳嗽反射が消失します。結果、呼吸筋力の低下や自力排痰が難しく、抜管後の無気肺のリスクを高めるでしょう。
また反対に鎮静が浅いと呼吸苦や不安の増大により努力呼吸となり、抜管のリスクや呼吸状態の悪化になることも…。
しりんじ
看護師
人工呼吸器装着中の鎮静評価でよく用いられるのが「RASS」ですので、併せて確認しましょう。
「RASS」の評価方法については、この記事の「安全ケア」で解説しています。
身体ケア
身体ケアは主に、以下の2つ。
- 清潔保持
- 褥瘡予防
全身状態が悪く免疫や身体機能が低下している患者が不潔になると、感染リスクが高まります。これを易感染状態と言います。
また、患者は時間同じ体勢を強いられているため、褥瘡のリスクも…
しりんじ
患者を動かす時は抜管などのリスクもあるため、必ず2人以上で行いましょう。
安全ケア
安全ケアは、主に以下の2つ。
- 鎮静評価
- 環境調整
人工呼吸器を装着中の患者の鎮静評価は、日本呼吸療法医学会が推奨する「RASS(Richmond Agitation-Sedation Scale)」で行います。
鎮静度合いによるリスクは、以下の表をご覧ください。
RASSの評価基準と評価方法は、以下の通り。
【評価基準】
【評価方法】
出典:ナース専科/RASS
鎮静に加えて、環境調整も重要です。
しりんじ
人工呼吸器装着中の患者の環境調整は、以下の記事で解説しています。
【図解付き】人工呼吸器の種類|設定・モード・準備物品まで徹底解説
【機械周り編】人工呼吸器装着中の患者の看護
看護師
しりんじ
安全な呼吸サポートを提供するためには、日々の作動確認や機械点検が大切!
- 作動確認
- 設定確認
- 回路点検
前勤務者と一緒にダブルチャックで行うと、落ちや漏れなく確認できます。何より患者の安全を保証できます!
看護師
しりんじ
看護師
しりんじ
人工呼吸器のアラームが不安な方は、すべてのアラームと原因・対処方法について解説した以下の記事が参考になります。

【ウィーニング編】人工呼吸器装着中の患者の看護
ウィーニングとは人工呼吸器を離脱し、強制換気から自発呼吸へと移行することです。
「自発呼吸トライアル(SBT)」で呼吸状態を評価した後に行われます(詳細は次章)。
看護師
こんな風に肩の荷が下りたと考える人も多いのではないでしょうか?
しりんじ
抜管後に呼吸状態が安定しないと、再挿管のリスクも十分にあります。
急変時でも焦らず対応するために、この章で完璧にしちゃいましょう!
観察項目
ウィーニング時の観察項目は、以下の画像をご覧ください。
危険な呼吸様式は、以下の表をご覧ください。
しりんじ
準備物品
再挿管のリスクはウィーニングに付きものです。最悪の事態を想定して、準備をしっかりしてウィーニングに臨みましょう。
準備物品は、以下の通り。
しりんじ
看護師
すべて一人で行う必要はありません!
自分にできることを見つけてウィーニングに参加しましょう。
【2ステップ】自発呼吸トライアル(SBT)とは?
自発呼吸トライアル(SBT)とは、ウィーニングにより生じる呼吸仕事量を評価し、抜管できるか判断するテストのことです。
以下の2ステップで完了する簡単なテストなので、覚えておきましょう。
- ステップ1:自発呼吸の確認
- ステップ2:モード変更と観察
では、1つずつ解説します。
ステップ1:自発呼吸の確認
当たり前ですが、自発呼吸がないと抜管はできません。
看護師
実は呼吸器のグラフィック(モニター波形)から分かります。
出典:ピクトグラムでわかる呼吸器内科/人工呼吸器のモード 自発呼吸の検出(トリガー)
A/C(強制換気)ならグラフィックで判断、SIMV(同期式間欠的強制換気)ならPSの出現も自発呼吸のサイン!
しりんじ
鎮静薬の投与を減らして自発呼吸を出やすくしてから実施されます
- プロポフォール(デブリパン):2 ~ 8 分で
- ミダゾラム(ドルミカム):1.8~6.4時間
出典
日本麻酔科学会/麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン 第3版 P96(プロポフォール)
今日の臨床サポート/ミダゾラム
人工呼吸器の換気モードについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【図解付き】人工呼吸器の種類|設定・モード・準備物品まで徹底解説
ステップ2:モード変更と観察
患者の自発呼吸能力を見極めるため、CPAPモードに切り替えます。
CPAPとは、自発呼吸に反応して呼吸仕事量を軽減するサポートをするモードです。
看護師
しりんじ
CPAPモードに切り替えて30分経過しても呼吸状態の増強がなければ、いよいよ抜管です!
再挿管のリスクも考えながら呼吸状態の変化に注意して観察しましょう。
まとめ: 人工呼吸器装着中の看護は覚えてしまえば簡単
人工呼吸器装着中の患者の看護は難しいとイメージを持つ方も多くいます。
特に新人や異動したばかりの方にとっては心理的ハードルが高く、できることなら避けたいと感じるのも無理はありません。
しかし看護や観察ポイントは決まっており、一度覚えてしまえば簡単ということもこの記事で分かったのではないでしょうか?
看護をするための知識を十分学んだなら、あとは実践あるのみ!
しりんじ
この記事を参考に、ぜひ人工呼吸器装着中の患者の看護に挑戦してみましょう。
Twitterでブログ更新情報を発信するので、ぜひフォローしてお待ちください。
第6回は「人工呼吸器装着による合併症」の記事です。
合併症に気づけなかったら、どうしよう?
早期発見をするためのポイントを教えて
看護師
こんな疑問がある方は、ぜひご覧ください。