消化器科に配属されて最初につまずくのは、各消化器官の仕組みや働きが分からないこと。
消化器は食べ物を消化・吸収する他にも、ホルモン分泌や免疫と密接に関係しており、非常に複雑だからです。
そこでこのような悩みはないでしょうか?
図解で分かりやすく教えてほしい
看護に直接活かせる知識を教えてほしい
看護師
消化器分野は覚えることが多い反面、一度覚えてしまえばこっちのもの!
しりんじ
消化器科ナースとして確実に一歩踏み出したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
口腔・咽頭
口腔・咽頭は、消化器官の始まりの部位。
咀嚼・嚥下などの食事行動について理解を深められます。
仕組み
口腔・咽頭は、頬・歯・舌やそれを動かす筋肉、食べ物が胃に向かうために通る咽頭から構成されます。
そして咽頭は、以下の3つから構成されます。
- 上咽頭:硬口蓋、軟口蓋
- 中咽頭:口腔、喉頭蓋、舌
- 下咽頭:喉頭、梨状軟骨
食べ物(食道側)と空気(気道側)を分別し、細菌の侵入を防ぐ役割もあります。
働き
口腔・咽頭の働きは、以下の3つ。
- 咀嚼・嚥下
- 味覚
- 唾液による自浄作用
主に食べ物を口に入れて噛み砕いたり、味を感じたりする器官です。
では、1つずつ解説します。
咀嚼・嚥下
咀嚼・嚥下とは、食べ物を口で噛み砕き、飲み込むまでのこと。
認知期→咀嚼期→口腔期→咽頭期→食道期の順番で進みます。
詳細は以下の図解をご覧ください。
5段階で咀嚼・嚥下をします。
出典:看護roo!/摂食嚥下の5期を表したイラスト
味覚
味は味覚以外にも形・性状・温度・経験など様々な情報から感じます。
しりんじ
看護師
しりんじ
味覚を観察する検査データはあまり馴染みがないかもしれません。
しかし、耳鼻科などではよくオーダーされる項目なので、覚えておいて損はないでしょう。
唾液による自浄作用
唾液は1回の食事で約400mlほど分泌されます。食事や会話をスムーズに行うために口腔内を加湿します。
また唾液には口腔内の自浄作用効果もあり、常に清潔に保ってくれています。
食道
食道は咀嚼し終わった食塊を胃へ運ぶ器官。
どのように食塊を運ぶかやその他機能があるかについても解説します。
仕組み
食道は体の中心部を通過し、心臓と肺の間を通過し胃につながる消化器官です。
上から頚部食道、胸部食道、腹部食道に分けられ、長さ約25cm、太さ約2〜3cm、厚さ約4mm程度の管状の臓器になります。
看護師
しりんじ
誤って食塊が気管に入るとムセや誤嚥性肺炎の原因に…。
働き
食道の働きは、以下の2つ。
- 食塊を喉から胃に運ぶ
- 胃から食塊の逆流を防ぐ
しりんじ
食塊は食道蠕動運動により胃まで推し進められます。
また、食道括約筋の働きによって胃から食塊が逆流するのを予防します。胃食道逆流症(GERD)は、食道括約筋の機能が低下することが原因の1つです。
胃
胃は食道によって運ばれてきた食塊の消化・吸収を行う臓器。
仕組みや働き方に加えて、よく使う内服薬についても詳しく解説します。
仕組み
胃は摂取した食べ物を一時的にためておく体の中央部(横隔膜の真下)にある消化器官です。
伸び縮みしやすい構造で、最大で1.5L程度の食塊を溜め込めます!
胃は上側から胃底部・胃体部・幽門部に分けられ、胃壁は内部から以下の5層で構成されます。
- 粘膜層
- 粘膜下層
- 固有筋層
- 漿膜下層
- 漿膜
入口(噴門)と出口(幽門)にはそれぞれ括約筋があり、食塊や消化液の逆流を防ぎます。
働き
胃の働きは、以下の3つ。
- 食べ物の貯留・消化
- 胃液の分泌
- 十二指腸へ消化した食塊を運ぶ
胃に溜まった食塊は、以下の3種類の胃酸で消化されます。
- 粘液:胃壁を保護と消化を促す
- 塩酸:殺菌作用
- ペプシノーゲン:塩酸に反応してタンパク消化酵素ペプシンに変換される物質
看護師
胃酸で消化した食塊はドロドロの状態になり、蠕動運動により十二指腸へと運ばれます。
肝臓
肝臓は代謝・解毒を担うフィルター的な働きをする臓器。
また、意外と知られていない免疫系としての働きについても解説します。
仕組み
肝臓は右横隔膜下にある腹腔内で最も大きい臓器です。
肝鎌状間膜で右葉と左葉に分類され、大きさは成人で1200〜1400g程度と言われています。
肝動脈から「酸素」、門脈から胃や腸で消化・吸収された栄養素が供給されます。
働き(代謝)
肝臓の働きは、以下の3つ。
- 栄養素の合成
- 貯蔵
- 解毒
これらの働きを総称して「代謝」と言います。肝臓で行われる代謝は、以下の6つ。
- 糖代謝
- アミノ酸・タンパク質アンモニア代謝
- 脂質代謝
- ビリルビン代謝
- 胆汁酸代謝
- 薬物代謝
では、それぞれ解説します。
糖代謝
吸収されたグルコースをグリコーゲンと中性脂肪に分解し、エネルギーとして貯留します。
絶食などエネルギー補充が難しい場合、貯蔵しておいたグリコーゲンを利用してグルコースを産生し、エネルギーとして利用します。
また、脂肪酸やケトン体を作り、エネルギー不足を補います。
アミノ酸・タンパク質アンモニア代謝
アルブミンやトランスフェリンなどの血漿タンパク質を合成します。
しりんじ
看護師
アンモニアは尿素に変換され、腎臓から尿として排泄されます(尿素サイクル)。
脂質代謝
脂質は熱源に変換するため、脂質代謝が行われます。
また、コレステロール(脂質)は肝臓で「胆汁酸」、副腎で「ステロイドホルモン」、性腺で「性ホルモン」を作るのに利用されます。
この他にも脂溶性ビタミン(A・E・D・K)の貯蔵庫にも!
ビリルビン代謝
ビリルビンは老廃赤血球を代謝して生成される物質です。
肝臓でグルクロン酸抱合という処理が行われ、処理前を間接ビリルビン(脂溶性)、処理後を直接ビリルビン(水溶性)と言います。
直接ビリルビンは胆汁の原料として利用されます。
しりんじ
看護師
しりんじ
このように関連づけて覚えると、記憶に定着しやすいでしょう。
胆汁酸代謝
胆汁酸は小腸に分泌され、脂質を分解します。ほとんどの胆汁酸は腸管上皮で再吸収され、門脈から再び肝臓に取り込まれ、再利用されます。
しりんじ
看護師
しりんじ
胆汁の流れが滞ると閉塞性黄疸になります。
薬物代謝
経口内服された薬(多くは脂溶性)は腸管に吸収され、血清アルブミンと結合して肝臓へ集まります。
薬は脂溶性から水溶性へ変換し、胆汁中に排泄されます。アルコールは空腸から吸収され、肝臓で代謝されます。
しりんじ
肝臓は様々な物質を代謝・解毒する生体フィルターの働きをしてくれているのです。
働き(免疫)
免疫機能となる肝臓の細胞は、以下の3つ。
- クッパー細胞(マクロファージ):体内に侵入してきた抗原を貪食し、死滅させる
- NK細胞:老化やウイルス感染した細胞を破壊する
- T細胞:免疫細胞に指令をだし、免疫コントロールをする
しりんじ
代謝・解毒のイメージが強い肝臓ですが、免疫機能としての役割もあると覚えよう!
胆嚢
胆管炎や胆石でよく耳にする胆嚢は、肝臓の真下にある胆汁を貯めておく臓器。
胆嚢や胆汁の役割がわかると、食事指導で脂質を制限する意味についても分かります。
仕組み
胆嚢は肝右葉下面に位置する小さな袋状の臓器です。
胆管にて肝臓や十二指腸と交通します。十二指腸につながる出口はファーター乳頭と言われ、膵管ともつながっています。
胆石とは、胆嚢の中に石ができる病気のことです。
働き
胆嚢の役割は、以下の2つ。
- 胆汁の貯留
- 胆汁の濃縮
胆汁は肝臓で1日600〜800ml程度生成されます。脂肪の分解・吸収をしやすくする消化液であり、胆嚢で濃縮されます。
十二指腸の粘膜から分泌されるコレシストキニンというホルモンに反応し、胆汁酸としてファーター乳頭から排出されます。
以下の図解をご覧ください。
しりんじ
看護師
補足として、よくイラストで胆嚢は緑色で描かれており、胆汁も緑色のイメージがあります。しかし、実際は黄褐色(ウイスキー色)が正解!
膵臓
インスリンを分泌するイメージが強い膵臓ですが、実は消化のサポートするホルモンの分泌をする上でも重要な役割を担っています。
胆嚢や肝臓との位置関係も含めて、膵臓について学べるようになっているので、ぜひご覧ください。
仕組み
膵臓は胃の後ろ、左上腹部にある臓器です。
膵臓の中心を通る膵管は、胆嚢や肝臓に繋がる胆管と合流して十二指腸(ファーター乳頭)に交通します。
十二指腸側から向かって膵頭部・膵体部・膵尾部に分かれます。その中心を主膵管が通る構造です。
働き
膵臓の働きは、以下の2つ。
- 外分泌機能
- 内分泌機能
では、1つずつ解説します。
外分泌機能
膵臓は腺房細胞で膵液を作り、外分泌機能とは消化酵素を合成・分泌すること。
- アミラーゼ:糖質分解酵素
- トリプシン・キモトリプシン:タンパク質分解酵素
- リパーゼ:脂質分解酵素
上部消化管に食塊が通るとクレチンやコレシストキニン膵臓を刺激し、膵液が分泌されます。
内分泌機能
膵臓細胞の一種であるランゲルハンス島により血糖値をコントロールすること。
- ランゲルハンス島A細胞:グルカゴン(血糖値を上げる)
- ランゲルハンス島B細胞:インスリン(血糖値を下げる)
- ランゲルハンス島D細胞:ソマトスタチン(分泌コントロール)
しりんじ
看護師
膵臓の働きが弱まると、血糖値や分解酵素不良で全身に大きな影響を与えます。
小腸
胃の幽門を通過すると十二指腸という小腸が始まります。
小腸は食べ物から生命維持をしていくために必要な栄養素を吸収する重要な臓器。
また、小腸と免疫系の関係性についても解説します。
仕組み
小腸は、十二指腸・空腸・回腸の3つの管から構成される全長約6mの臓器です。
小腸壁は内側から粘膜・筋層・漿膜から構成されます。
粘膜表面には絨毛があり、その間の腸腺でタンパク質や二糖類を分解する酵素を作っています。
- 十二指腸:胃の幽門部から胆汁や膵液が分泌されるファーター乳頭を経て、空調までの約30cmの管
- 空腸:十二指腸終わりから大腸始まりの部分までで、口側の40%の管
- 回腸:十二指腸終わりから大腸始まりの部分までで、肛門側の60%の管
大腸との移行部を回盲部といい、大腸から回腸へ逆流を防ぐためのバウヒン弁があります。
働き
小腸の働きは、以下の2つ。
- 消化・吸収
- 免疫の制御
胃・十二指腸で分解・消化された栄養素は、空腸・回腸で吸収されます。
具体的には、ブドウ糖やアミノ酸は毛細血管に、脂肪は乳糜(にゅうび)としてリンパ管へ吸収されます。
その他にもMgやビタミン・葉酸なども小腸で吸収されます。
小腸には腸管関連リンパ組織があり、リンパ球(T・B細胞)やマクロファージ、樹状細胞などが存在します。
これら細胞による免疫をコントロールしているのです。
大腸
大腸は小腸から運ばれてきた食塊(ドロドロ)の水分や電解質の吸収をし、排便形成を行う臓器。
大腸と排便形成の関係について理解できると、腸疾患の理解を深められます。
仕組み
大腸は、盲腸・結腸・直腸の3つから構成される全長約1.5〜2mの臓器です。直径は5〜8cmで 、栄養素や水分の吸収を行います。
- 上行結腸
- 横行結腸
- 下行結腸
- S状結腸
直腸は仙骨に沿って下側に伸びて、最終的に肛門へと繋がっています。
肛門は肛門括約筋によって開閉や排便コントロールが行われています。
働き
大腸の働きは、以下の3つ。
- 食物繊維の発酵
- 水分・電解質の吸収
- 排泄行動を促す
食物繊維は腸管細胞により分解・発酵され、ビタミンB群・Kとして吸収されます。
また、水分吸収を行い排便形成(排便の硬さは大腸にある時間で決まる)をします。
水分が吸収され排便形成されると、腸蠕動運動で肛門まで運ばれ排泄されます。
看護師
しりんじ
一方で腹圧がかけにくかったり、水分摂取量が少なかったりすると便秘の原因に…。
大腸の働きから便性状の異常を推測できるでしょう。
まとめ: 仕組みと働きを覚えることが消化器ナースの第一歩!
消化器の仕組みや働きは様々にあり、覚えることが多くあります。
一方で一度覚えてしまえばこちらのもの!
理由は「どの臓器の、どの部位」が障害されているから「〜の働きができない」というように関連づけてアセスメントできるから。
また、栄養や排泄機能を活かした看護を考えられるようにもなるので、ぜひ参考にしてください。
しりんじ
Twitterで看護記事に関するブログの更新情報を発信するので、ぜひフォローしてお待ちください。